厚生年金基金制度

厚生年金基金制度の特徴

厚生年金基金制度は、税制適格年金制度(適年)と並んで、企業年金の中心的役割を果たしています。厚生年金基金制度は、「厚生年金基金」という特別法人が、事業主である企業と、年金制度加入者である従業員との中間に介在しています。厚生年金基金は、厚生年金に加入している事業所単位で加入する企業年金です。厚生年金基金は、国の厚生年金の一部を代行するとともに、企業独自の退職金制度を上乗せすることによって、より手厚い退職給付を行うことを目的としている制度です。

厚生年金基金は、「代行部分」の存在が大きな特徴となっています。

国の年金と厚生年金基金の給付

厚生年金基金は、国からの給付の中で、老齢厚生年金のうち報酬比例部分について国に代行して給付を行っており、これを「代行制度」といいます。代行して給付を行う部分(代行部分)には、基本プラスアルファ部分(付加部分)が加わり、あわせて「基本部分」といいます。さらに、従来から企業独自の退職金制度として存在していた、退職一時金制度もしくは適格退職年金に係る給付を、厚生年金基金に移行するか、あるいは従来の退職一時金制度等はそのままにしておきながら、厚生年金制度独自の給付を新たに創設することも可能です。このように企業が独自の給付として設計している部分を「加算部分」といいます。

 

厚生年金基金の種類と給付   

給付の形態による分類 加算型
  代行型
  融合型(共済型)
設立形態による分類 単独型
  連合型
  総合型

@ 加算型
給付が「基本部分」と「加算部分」とに分けられます。
「基本部分」は国の老齢厚生年金の報酬比例部分と同様の算定式を用いますが、代行部分に若干上乗せした設計となっています。
「加算部分」は、厚生年金基金独自の給付設計で、給与比例制や定額制の他、両者の組み合わせやポイント制とすることもできます。
加算部分の給付の一部は必ず「終身年金」で支給するなど、いくつか満たすべき要件がありますが、企業の実情に応じた弾力的な企業年金設計が可能となっています。

A 代行型
代行型は加算型の「基本部分」のみの給付を行う厚生年金基金です。公的年金の老齢厚生年金を代行すると同時に、その支給率に上乗せした部分(基本プラスアルファ:3割程度以上の厚みが必要)から構成されています。

B 融合型(共済型)
融合型は一部の政府関係機関を設立母体とする厚生年金基金で実施されています。

 

掛金

厚生年金基金では、国の厚生年金の報酬比例部分に対応する掛金を事業主(企業)から徴収しています。したがって代行給付に必要な保険料は、国に納めるのではなく厚生年金基金に納めることになります。この保険料は国への納付が免除されているという意味で「免除保険料」と言われています。
免除保険料は、厚生年金と同様に事業主と加入員が折半して負担することになっており、免除保険料率は、加入員の平均年齢など確厚生年金の実情に応じて、3.2〜3.8%の7段階で決められています。
厚生年金保険料率17.35%のうち、3.2%〜3.8%を厚生年金基金に残りの13.55%〜14.15%を国に納めていることになります。

加算部分掛金は、一般的に事業主である企業が負担しており、基金に加入する以前の期間(過去勤務期間)については、別途、特別掛金(PSL掛金)として徴収されています。        

PSL(Past service Liability 過去勤務債務)

 

財政検証および財政再計算

財政検証および財政再計算の意義

 厚生年金基金の掛金率は、将来の収入(掛金)と支出(給付)が等しくなるという「収支相当の原則」に従い、一定の仮定のもとで計算されています。
 一定の仮定(計算基礎率)が現実と一致していれば、問題ないのですが、実際には予測と現実は必ず乖離することになります。
 そこで、現状の制度では、毎年1回「財政検証」を行うとともに、5年ごとに「財政再計算」を行うことになっています。

@ 財政検証

基金が継続する前提としてチェックを行う「継続基準の財政検証」と、基金が継続しないことを前提にチェックを行う「非継続基準の財政検証」の2つの方法があります。

@)継続基準の財政検証

将来の給付を行うために現在準備しておくべき金額(責任準備金)と、基金に実際に準備されている金額(年金資産)とを比較して、基金の財政状況をチェックするもの

年金資産 > 責任準備金   余剰が生じている
年金資産 < 責任準備金   不足金が生じている

不足金が生じている場合、直ちに掛金による補填が要求されるわけではなく、5年ごとの財政再計算時に掛金を見直すことでこの不足金の解消を実施することになります。ただし、不足金が一定の許容水準を超えた場合には、財政再計算を待たずに掛金の見直しが実施されます。

A)非継続基準の財政検証

平成9年の財政決算より、継続基準の財政検証のほかに、万一、基金が解散したとしても、それまでの期間で確定している給付について加入員や受給者にきちんと支払える積立金を保有していることをチェックする「非継続基準の財政検証」が導入されました。

基準日時点で解散した場合に過去の加入期間で発生しているとみなされる給付を確保するために必要である資産(最低積立基準額)と実際の時価資産額を比較して検証します。

時価資産額 < 最低積立基準額 の場合

翌期末までに積立水準の回復計画を策定し、翌々年度から7年以内に積立水準を確保する必要があります。(平成13年度までは、最低積立基準額の9割までの回復計画の策定でよいことになっています)。

参考資料

鈴木登樹男「この1冊で年金会計がわかる→できる」(ビジネス社)

(株)東京ファイナンシャルプランナーズ

DCアドバイザー講座テキスト

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